RANDONNEUR PLUS PROJECT

本州縦断ギネスチャレンジ

縁あって寄稿させていただきます。この春に「本州縦断」のギネスチャレンジをいたしました、小原と申します。
今までも度々「日本縦断」の記録へはチャレンジされてる方がいましたが、今回自分が行ったのは、下関をスタート地点、青森の大間をゴールとする本州の走破を対象とする記録です。

 

【WUCA】

現在、自転車ロングライドのギネス申請はWUCA(World Ultra Cycling Association)が取りまとめています。まずWUCAの記録を樹立し、その中で要件を満たすものについてはWUCAがギネスに記録申請を行うという流れです。

 

【チャレンジの動機】

御存知の通り、日本縦断の記録にチャレンジする人は落合さんを始め、何人もいらっしゃいます。みなさんとても速く走る方々ばかりなので、自分が記録にチャレンジするという発想は今まで全くありませんでした。

そんな中、本州縦断という記録が既にあること。数年前にUnsupported部門ができたこと。これらを知って、更に現在の本州縦断の記録ならまだ破るのは現実的と思えたので、やるなら今の内だ!と今年のGWを利用して行ってきた次第です。

 

【走行計画】

今回自分の引いたルートでは、本州縦断は約1670kmでした。下関の端、関彦橋をスタート地点として、青森の大間崎にある本州最北端モニュメントがゴールです。計画としては、この道のりを4日切りで走ることを目処として、一日420km程度を目処に計画を立てました。1日分を20時間程度で走りきり、4時間を休憩に充てるというルーティーンです。

 

宿泊場所としては、一日目が兵庫県の相生。二日目が富山県の新高岡。三日目が山形県の酒田。そして四日目に大間崎にゴールです。

 

【一日目】

スタートは22時としました。交通量の少なくなる時間帯から走り始めたいというのと、20時間で走るという目標から逆算して、多少前後してもその日の宿にチェックインしやすいというのが主な理由です。

 

 

下関から岩国手前までは時間帯もあってか交通量も少なく、なかなか軽快に走れました。少々雨が降っていたのは難点でしたが。

それでも下関から暗闇の中を走り続け、その後に不意に現れた周南市(だったと思う)の工場地帯の明かりは印象的で、普段見ないエリアの、普段見ない時間帯を見てる事に気持ちが高揚したのを覚えています。

 

朝靄に浮かぶ宮島を横目に走り、広島市に入った辺りで朝に。この辺りから交通量の多い国道二号線をひたすら走ることになります。延々と幹線道路を走ってるだけなので、正直この間の思い出はほぼありません…。

道中、Unsupportedの場合は実際に走った証明の一部として、ランドマークとなるような所での自撮りをすることになっています。その為にちょいちょいとルート沿いの有名な場所を訪れていたのですが、初めて訪れた錦帯橋は真っ暗な中にぼんやりと浮かぶ程度。心の目で見る分にはいいのですが、証拠には使えなそうなレベルにしかなりませんでした…。

あとは倉敷にも寄り道したり。景観はいいんですが、結構信号多くて時間のロスが大きかったのはミスりました。

ともあれ、初日は16:30頃に相生に到着。予定より早くに到着したので、休憩時間を長く取って元々の予定時刻に出発するか、それとも休憩時間は予定通りで早めの出発にするか。ここは前者を取ることにしました。

 

【二日目】

ちょっと遅れて22時20分にリスタート。ここからは日本海側に抜けることになるので、交通事情は初日に比べてだいぶ走りやすくなる見込みです。
ですが、道路は良かったものの生憎の向かい風。そんな中、姫路から夜闇の中を北上します。

夜明け頃の気温は7度

 

舞鶴に到着すると、そこからは向かい風に加えて眠気も来てしまい、なかなか速度が上がりませんでした。

鯉のぼりが水平になる程度の向かい風

 

それでも高浜や越前海岸など、景色を楽しみながら走れるので二日目以降は気分良く走れました。越前海岸は爆風ド向かい風でしたけど…。
金沢を抜ける頃にはすっかり夕方で、この時間に市街地を通るルートにしてしまっていたのは失敗でした。

市街地を抜けて二日目最後の峠、内山峠へ。ここを越えた頃にはすっかり日も落ちて、高台からは市街地の明かりが見えたのが印象的でした。なんか高台からの灯りばっかり印象に残っている…?

この日は天候的なのと体調的なコンディション両方あまりよろしくなかったのでペースが上がらず、予定より大幅遅れで20時半頃に新高岡に到着。
流石に元の予定通り22時出発は無理があるので、予定より遅れても休憩時間は確保することにしました。

 

【三日目】

朝の3時前にリスタート。予定より5時間弱遅れての出発です。

朝焼けの立山連峰

 

この辺りまで来ると、景色や町の雰囲気も変わってきて、北の方に入ってきたなという感じがし始めます。いいですね。旅してる感が出てきますねー。

この日は早朝のうちに親不知を抜け、そのまま新潟を駆け抜けて山形の酒田がゴールです。ルートはほぼ日本海沿岸を走り続ける感じになります。

定番の、親不知のウェストンさん

 

直江津の船見公園に立ち寄り、小休止。ここの公園は13年前に東京スタートでCtoCをしたときのゴール地点でした。その時の走行距離335kmは、これが人生で最長のものになるだろうとその時点では思っていたのですが…。

 

なんて思いながら、寺泊を抜けて越後七浦シーサイドラインへ。このルートは交通量は多いものの、景色は良いので結構好きな道だったりします。
その後、夕方の新潟市内の渋滞にハマり、村上に着いたのは19時頃。この時点で酒田まで残り100kmあるので、どう考えても当初のルーティーンでの進行は無理です。まずは0時に宿へ着くことをを目標にして宿に連絡。いざ、笹川流れに突入です。

 

笹川流れは景勝地ですが、暗闇の中なのでなにも見えず。
それは構わないのですが、とにかく寒い!
当初の天気予報では全行程で最低気温は15度くらいの予報だったので、この日のドロップバッグには防寒具をほとんど仕込んでませんでした。そんな中、道中にある温度計は5度を指し示しています。その中を春先装備で残り数十キロ走り続ける事になったこの夜、結構極限状態となりつつ、とにかく歌ったり強度を上げたりで気を紛らわせて、なんとか予定通りの0時に酒田の宿に到着。

 

ここの宿のドロップバッグには防寒具を仕込んでたとは言え、かなり消耗を感じていたので、ここは休憩をしっかり取ることを選択しました。

 

【四日目】

この日はしっかり休息を取り、宿の朝食も頂いてから8時前にリスタート。この時点で当初の予定である四日切りは断念し、無理のない範囲での記録更新に切り替えています。

朝食は二度おかわりしました

 

山形から秋田へ入る辺りは鳥海山が綺麗で、片やその後は日本海を眺めながら走ってと。

この辺りをこうして朝に走っていると、遠くまで来たんだなという実感が湧いてくる。そんな景観です。
秋田の五城目町辺りから内陸へと進み、上小阿仁村辺りで桜前線に追いつきます。昼の気温は25度。東北とは言え、普通に過ごすには程よく、走るには暑さを感じてくる気温にまでなっています。

大館を越えて大鰐へ向かう辺りで日が暮れ、気温が下がり始めます。一気に冷え込みはじめ、日没直前まで20度以上あった気温が、青森市手前にさしかかった辺りには3度に。

防寒具はあったとは言え秋程度の想定だったので、寒さに加えて体力の消耗もあってかなり衰弱しているのを感じました。疲れとかではなく、衰弱。

昨日の気温5度とあまり変わらない割に、更に寒さを感じていたのは、おそらく心拍数が上がらなくなっていた為に体温も上がらなくなっていたことによるんじゃないかと思います。この時点で、全力でペダルを回しても110くらいまでしか上がらなくなってました。

 

新青森駅まであと数キロという地点。信号待ちの僅かな時間に心拍数が50まで下がったのを見て、このまま更に気温が下がるであろう深夜に大間まで走るのは危険と判断し、新青森で一泊することにしました。

 

ということで、近所の吉野家で休憩したあと、RAAでいつもお世話になっている東横イン新青森駅東口にチェックイン。23時前でした。

毎度お世話になってます

【五日目】

予定にはなかった五日目に突入です。
朝5時にチェックアウトして、大間崎を目指してラスト140km程。昼下がりの函館行きのフェリーを目指して、目標は午前中のゴールです。

 

昨晩にしっかり温まって休息をとったおかげか、心拍もある程度上がるようになってきてます。これなら行ける!と実感が湧いてきます。

 

最終日は南東からの風で序盤は向かい風基調でしたが、前半を乗り切って横浜町の辺りからは快適な追い風に。下北半島を走りながら旅の終わりを感じつつ、大畑の市街地辺りからは満開の桜並木。

 

それを越えたら、波濤の彼方に見えるはゴール地点の大間崎!
最終日のラストは、全てがゴールを歓迎してくれているかのような絶好の天気、景色の中を走り抜けて、自然と足取りも軽く。

 

五日目の午前11:23に大間崎のモニュメント前でゴール写真も撮ってもらい、記録は4日13時間23分で無事に記録更新となりました。

 

【チャレンジを終えて】

まず思ったのは、自分は四日弱の予定で、実際には五日目でのゴールとなりましたが、その中でもやはり不調になる日や予定通りにいかない日というものに遭遇しました。
それと比べてRAAMはもちろん、その他の所謂ウルトラディスタンスと言われるものはもっと長い距離と日数を走るものが多々あるわけで、その間パフォーマンスを維持する事の困難さを改めて実感しました。

それと同時に達成し切った時の充実感もひとしおです。

今回の本州縦断。まだタイムは約四日半ということで、割と自分なら越えられると思われる方もいるのではないでしょうか?そういう意味で、後続の方のトライを促せる範囲のタイムで終わったことは、ある種幸いだったかなとも思っています。

興味が湧いたあなたも、ウルトラサイクリングにチャレンジしてみませんか?