ザ・ジャパニーズ・オデッセイ DAY1 桜島から五木村へ — 258kmの開幕戦
総距離およそ2,300km、累積標高は最低46,000m、鹿児島県の桜島から長野県松本市を目指すウルトラロングライドイベント『ザ・ジャパニーズ・オデッセイ2025(TJO2025)』を走った落合佑介のウルトラロングなレポートをお届けします。
まずは、桜島からスタートした1日目をどうぞ!
今年もスタート地点となる桜島レインボーホテルの予約が取れず、鹿児島市内のホテルに宿泊することになった。今回このホテルを選んだ理由はただ一つ——朝食が6時から利用でき、フェリー便に余裕を持って間に合うからだ。
ゴール後に必要となる輪行用の荷物は、スタートの朝にコンビニから松本市へ発送した。6時に朝食をとり、6時10分にはホテルを出発。
桜島フェリーについては「24時間運航を停止した」と聞いていたが、予定通り6時30分の便に乗船できた。フェリーの中では、昨年のTJOで九州から山口県・広島県まで共に走ったアンドレイさん(No.99)と再会。彼はブリーフィングで“ペーサー”として走ると宣言していた。
自分は「ペーサー=伴走」と誤解していたことに、スタートしてから気づくことになる。それまではアンドレイ氏とまた一緒に走れると期待していたため、ファストラン志向でどんどん進みたい私にとっては、伴走できる心強い存在が一人減ったような複雑な心境でもあった。
■ スタート前:静かな高揚と小さな慌ただしさ
普段はスタート直前にギリギリ到着することが多いが、この日は下城カメラマンの撮影列に並ぶため、少し早めに会場入りした。今年は撮影が前日と当日に分かれていたためスムーズに進み、予想以上に早く撮影を終えられた。その後は鹿児島市内を眺めながら、静かに心を整えて待つ時間があった。
ふと気づくと主催者のスピーチが始まり、さらにふと気づいた時にはカウントダウンが始まっていた。
慌ててサイコンを起動し、8:02にスタート記録を開始。時間通りのスタートを切り、勝手に思い描いていた“時間にルーズな外国人ライダー”のイメージが気持ちよく覆された。そんな自分の思い込みもあり、あまりにスムーズなスタートに思わず笑ってしまった。
■ パック走行から先頭へ
序盤は集団になりやすいため、少し頑張って前方へ位置取り。先頭を取るつもりはなかったが、気づけばパックの先頭に出ており、しばらく牽引する形となった。
セグメント1は垂水市の高峠が通行止めになり、短縮ルートになっていたことは事前に共有されていたのだが、サイコンにインストールしていたルートが“変更前”だったため、桜島を離れる地点で一度後方に下がることに。
10名ほどのパックには日本人の永山君(No.56)の姿もあり、彼のペースに合わせようと思っていたが、気分が昂っていたのか、またしても先頭に出てしまう。普段は単独走が多いだけに、たまにはこんな展開も悪くない。
■ セグメント1:From Kihoku astronomical observatory to Mt. Ebinodake 霧島・えびの岳へ

スタートから1時間弱でセグメント1のスタートに到着。ここからは自分のペースで走りたいところだったが、同じ走力の参加者が多く、自然とパックが形成された。
アンドレイさんもパックにいたが、実はこの時初めて「ペーサー」という言葉を誤解していたことに気づく。
彼のペーサーは“自分のペースで走り、温泉やホテルでゆっくりしながら進むスタイル”であり、決して伴走する意味ではなかった。つまり、走行中のスピードはいつもの彼のスピードで、先頭集団にいるのは当然というわけだ。
今回のTJOはどのセグメントも激坂が多い。集団で走行していても明確に参加者をふるいにかけてくる。先頭はさらに前方にいるようだった(最後まで誰かは不明)。自分は2番手あたりを走っていたが、下りは慎重に走るため5人ほどに抜かれる。
林道やグラベルでは28cのタイヤが不利だが、登りや平地では優位に立てる場面が多かった。
55km地点でパックになっていたドイツ人のヨナスさん(No.14)がコンビニに寄ったので、前方に見えていたライダーたちを追うために大きな交差点で2段階右折したが、その間に視界から消えてパックのチャンスを逃してしまう。
ただし、後の激坂区間で自然と追いつき、そのままのペースで追い抜いたため再び単独走行へ。やっぱり荷物はできるだけ軽量にする方が走行中は有利だ。
ノンストップだから実現できる荷物量。止まらない分、スペースを取る防寒グッズは持参しない。万一の時は事前予測してコンビニ等で購入する。気温の低下次第で衣類、カッパ、手袋を購入する。今回は中部ステージの夜間に軍手を購入した。
霧島市のえびの岳へ向かい、ゴール前には標高1,000m近くまで登る。そこからは予習していた通りのグラベル区間。危険箇所も想定済みで、順調に走り切り、14時半にセグメント1をクリア。予定は15〜16時だったため、想定以上の貯金を作れた。
■ フェリーの時間が“絶対条件”というプレッシャー
今回のTJOは、松本でのゴール後に予定が入っているため走行計画をタイトにしている。
早め早めに貯金を積み上げたいが、問題は今回のTJOでは3回も予定されている“フェリー”だ。
フェリーだけは絶対に出航時間に間に合わなければならず、万が一遅れるようなことがあれば全ての貯金が帳消しになる。
これが精神的にもっとも大きなプレッシャーとなっていた。
■ 伊佐市で補給、そして最大の課題は「11個の充電」

(モバイルバッテリーは1つ置いていきました)
標高1,000mから一気に200m付近まで下り、伊佐市へ。145km地点にあるドコモショップとコンビニで補給食を購入した。九州ステージは補給地点が都市部に偏っており、田舎区間ではほとんどコンビニがない。できれば寄りたくないが、今回は200km近く無補給で走る想定だったため購入できる場所で確保することは必須。
その結果、毎回のように2,000円近く消える、コンビニにとって“とても優良な客”になっていた。
さらに頭を悩ませたのが “充電問題” だ。
必要なデバイスは実に 11個。
iGP(サイクルコンピューター) フェリー毎に充電
LEOMOスマートフォン+充電マウント 半日に1回充電
VOLT800neo(キャットアイ ライト) フェリー3回中1回充電
VOLT400neo(キャットアイ ライト) フェリー3回中1回充電
NANO60(キャットアイ リアライト) フェリー3回中1回か不要
小型スピーカー 1日1回充電
Di2 フェリー毎に充電
モバイルバッテリー 不測の事態に備えてできるだけ満充電
ELXEED電動ポンプ ?
スマートフォン(普段使用分) 1日1回充電
充電計画としてフェリー・チャージスポット・快活クラブを想定していたが、チャージスポットが都市部に偏っており、伊佐市から臼杵市までにスポットはない。
さらに四国ステージも八幡浜・宇和島は営業時間外通過する。近畿ステージも和歌山市を出発すれば伊勢市までレンタルスポットがない。
TJO直前に“1契約で3台同時レンタル可能”となったが、容量5000mAh・130gというサイズは気になる。
ちなみにチャージスポットとは、スマートフォンやタブレットを充電するためのバッテリーを手軽にレンタルサービスだ。コンビニ等のバッテリースタンドに備え付けられたモバイルバッテリーを、手続き後にそのまま抜き取り持ち運べるセルフ式。
返却時は、レンタルした店舗に戻す必要はなく、別の店にあるバッテリースタンドに返却できるというシェアリングシステムのため、バッテリー本体への充電を私自身がしなくて良いのだ。
■チェックポイント2:Road to Kuma

10%未満の斜度が続く区間で、650m程登る。
途中でドイツ人のヨナスさんに追いつかれ、一緒に走ることに。彼は私と同じサイクルジャージメーカー、サンボルトのジャージを持っており、しかも私の故郷である滋賀県の中でも近くに住んでいるという偶然が重なり、一気に親近感が湧いた。
17時半、なんの目印もないポイントでチェックポイント2をクリア。
彼は「チェックポイント3は翌日チャレンジする」とのことで離脱し、ここからは完全な単独走行に。どうやらいつの間にか先頭に立っていたらしく、以降は参加者と出会うことはなかった。
■ チェックポイント3:Nunoga falls 布ヶ滝 —— “サービス区間”の大誤算

日が暮れてから布ヶ滝へ向かう。
区間距離26km、獲得標高600m。この一見すると穏やかな数字に「オーガナイザーの皆様、ありがとうございます」と思っていた自分が甘かった。
本来は西側ルートを予定していたが、1か月前に南側ルートを発見。
2024年10月のストリートビューでは通行止めの表示があったが、1年経っているし通れるだろう——と判断したのが間違いだった。

通れるには通れたが、押し歩き必須の区間に突入。ロードバイクを担ぎ、ゴツゴツした岩の上を歩く。その先の道が崩落していると引き返すしかなくなるが、岩の道は続いてくれていた。岩の道を抜けると舗装された道路にたどり着いた。数㎞進むとチェックポイントに到着した。
電波が届く地点まで移動してグループチャットにメッセージを送ったが、後続が大量に登っていた模様。だが走行中で電波がほぼ無い山中では、ツイ廃(ツイッター廃人=頻繁にXを更新して確認してしまう)でない限り確認は難しかったはずだ。
そんなとき、残念なお知らせが左足から届いた。クリートカバーの紛失だ。カバーがなくても走れるし歩けるが、ネジや金具が傷つく。左右のシューズの高さも違うので、左足に影響は出るだろうと心配になった。
■ セグメント4へ:Hirazo Pass 白蔵峠 もっとも“研究した区間”

※夜間で写真スポットが見つかりませんでした。鹿児島市の観光名所をお楽しみください。
セグメント4は事前調査を最も入念に行った区間だった。
そんな事前の努力の甲斐もなく、白蔵峠へのアプローチも、その後の下りも、ことごとく通行止め。さらに気づいていなかった通行止めも追加で発見され、最終的に短縮コースとなり、距離20km・獲得標高600m に。距離は半分、獲得標高は約3分の1の600mだった。
しかし、セグメント4へ向かう途中の林道こそ、“静寂で不気味”な道だったのだ。そのことに気づくのは、まだ少し後のことである……。
■ DAY1終了:静かな五木村で区切りを付ける
こうして DAY1は258km走行。
熊本県五木村、セグメント4を進む途中でその日の走りを終えた。














