RANDONNEUR PLUS PROJECT

ジャパニーズオデッセイ DAY2 五木村~鬼北町ー引き返す勇気と進む覚悟

総距離およそ2,300km、累積標高は最低46,000m、鹿児島県の桜島から長野県松本市を目指すウルトラロングライドイベント『ザ・ジャパニーズ・オデッセイ2025(TJO2025)』を走った落合佑介のウルトラロングなレポートをお届けします。 

 

DAY2 

 

■熊本県八代市から宮崎県の諸塚山スカイラインへ 

 

 

 

セグメント4を無事クリアした。この時点で、区間短縮があったことにより大幅なルート変更を決めていた。 

当初は白蔵峠から五木村を南下し、市街地へ下り、東へ進んで椎葉村を経由し、セグメント5「Mitate Valley」へ向かう予定だった。しかし、短縮された場所(セグメント4のゴール地点)からは、北ルートのほうが距離・獲得標高・そしてコンビニの数(24時間営業ではない店が多いが)を考えると有利に思えたため、急遽変更した。コース短縮の発表がスタートのかなり直前だったので、鹿児島に向かう移動中の新幹線の中でコースを作成し対応した。 

 

もちろん変更後のルートも簡単ではない。九州はまだ暖かいので標高1,100mまで登るのはいいとしても、夜中に1,000mを一気に下る区間がある。夜間に心拍が上がりにくい状態で、長時間の下るのはリスクが高い。リスクだけを考えるなら、緩い下りが続く南ルートの方が安全だっただろう。しかし今回は時間を優先する必要があったため、距離が短くなる北ルートを選択した。 

 

コンビニは多いものの、ほとんどが閉店中。ようやく開店していた1ヶ所に立ち寄ることができた。考えてみれば前回の補給から既に12時間以上経っており、無補給・無休憩で走り続けていたことになる。全体を見ればまだ序盤で、体力も眠気も問題はない。ジャージの懐にパンを入れ、走りながら少しずつ補給した。夜間走行では、店外で座り込むより、走行中に小まめに補給した方が身体が整い、気分転換にもなる。 この区間は街灯があって明るい方だが、暗闇に入ると気が滅入るので、気分転換できるようにしておかないといけない。夜通し集中して走るのはウルトラロングライドではかなり厳しい。

 

夜が明ける頃、セグメント5のスタート地点への登りが始まる。まず1,000m近い飯干峠を越え、300m下り、再び950mまで登る。北ルートは距離の面では正解だったが、アップダウンの激しさと予想以上の悪路により、時間は想定以上にかかった。それでもなんとかクリア——と言いたいところだが、そこはようやくセグメント5のスタート地点。ここから標高100mまで一気に下る。幸いにも周囲は明るくなっており、小石程度の落石はあるものの、整備された道で安全に下ることができた。 

 

 セグメント5で続いた「想定外」 

 

ここからが本当の試練だった。 

 

 

まず、私のルート作成ミスで、日之影町の市街地で大きく道を間違えた。本来の県道ではなく、対岸の細い道をコースに設定してしまっていた。「ジャパオデらしいグラベルだな、良い荒れ具合だな」などと思いながら、対岸に渡る予定だった橋を見ると、まさかの落橋。今走ってきた道自体は先へ続いているようだが、しばらく行った先で横に曲がっているし、草木で先は見えない。ストリートビューにも反映されていない。1.5km先に別の橋があり、そちらは民家があるので対岸に渡れる可能性は高そうだったが、道の荒れが酷くなっていくように見える。2km戻るか、そのまま進むかで迷った末に引き返した。これが正解だったのかは分からない。ただ、時間を大きくロスしたことには間違いない。 

 

 

次は草むら区間。進むかどうかは轍(わだち)の残り具合で決めることが多いのだが、奥へ進むほどそれすら分からなくなった。ストリートビューではもっと手前から画像がなかったので怪しいと思っていたが、ツーリングマップルには細い道が掲載されていたため、進めると判断していた。電波がないエリアだったので、いったん引き返して状況をグループチャットに報告。分かれ道まで戻って、ストリートビューの画像がある道下ればセグメントに合流できると分かったため、そちらを選んで進んだ。しかし後日確認すると、その手前に「大刈野林道」という分岐があり、こちらはストリートビューにも地図にもない。通行できるかもしれないが、進もうと思える確信までには至らなかった。 

動画 → https://www.youtube.com/watch?v=JD3Ia261AYU 

 

そして極めつけは、次の区間だった。 

 

入口は藪だが、その先はかすかに轍がある。進んでみると、下りの激坂のためバイクを押して進むしかない。その先は、道の真ん中だけコンクリートが見え、苔や枝が脇に広がる謎の光景。真ん中が轍と思ったが間違っていた。轍というのは車輪の痕なので、車の両輪かバイクの一輪なのだが、道の真ん中に直線で残っていた。今思い返すとあれは轍ではない。そんな考えには至らなかった。 

 

やがて廃屋が現れ、さらにその先にも放置された道具類が置かれた廃屋が続く。アスファルトの道も無くなり、ドロドロの土だ。背丈ほどの草むらをかき分け、倒木を避け、ナビの線だけを頼りに進む。ロードバイクを倒木越しに下ろし、私は倒木に尻もちをついて越える。川のような形状でぬかるんだ落ち葉の上を歩く。しかし場所を間違えれば泥沼のように沈むほどの柔らかさで、一歩一歩が緊張を強いられる。1kmほどの区間に30分以上かかっている。だが、時間の問題ではない。作戦としては”いのちをだいじに”だ。初めて参加したジャパオデの遭難じみた感覚を思い出し、「ああ、遭難してるな(笑)」と苦笑するしかなかった。身ひとつでも苦労しそうな枝の隙間を、パッキングして重量の増すロードバイクと共に進む。 

 

 

抜け出た時には泥まみれで、フェリーに乗れば不評を買うレベル。私だけでなく、愛車のDE ROSAも可哀想なほど泥だらけだった。私の傷はよくわかるが、ロードバイクは傷があるのかも分からないほどで、落胆して写真を撮る気力すらなかった(フェリー乗り場近くまで下ってきて冷静になったところで記録に残した)。主催者に迂回路を設定するように報告した。確認はしていないが、私以外の参加者は迂回したのではないだろうか。 

 

 フェリーへ向けての時間との勝負

 

 

落胆している暇はない。ジャージも泥だらけになったため、このままフェリーに乗ってはいけない。コインランドリーでの洗濯が追加され、フェリーの時間調整が必要になった。しかし1つ目の通行不可区間のおかげでコースが短縮されたため、予定より約3時間早い14:00にセグメントをクリアできた。17:35発のオレンジフェリーに狙いを絞り、残り33kmを急いで下る。まずは12時間ぶりにコンビニに立ち寄り補給した。 

 

チャージスポットは3台借りる予定が、どうしても2台しか借りられなかった。2台目を借りる際に、私が返却した充電ゼロのバッテリーをまたレンタルしてしまう。サービス開始して間もないのでシステム的な問題だと思うが、充電ゼロのバッテリーレンタルは意味がないので、コインランドリーの洗濯が終わった後、改めて2台レンタルした。 

CHARGE SPOT: https://chargespot.jp/ 

 

フェリーターミナルに着くと、ピカピカのランドナーが置かれていた。自分の泥まみれのバイクが恥ずかしくなるほど綺麗だ。その持ち主はオーガナイザーの一人、ギヨームさんだった。セグメント5の状況を聞かれ、つたない英語で部分的にキャンセルすべきだと伝えたが、伝わったかは分からない。フェリーに乗り込み、充電を整え、洗濯を済ませ、体をキレイに拭いてようやく深く眠れた。 

 

 四国ステージ突入 

※夜間が写真が少ないです。鹿児島名物きびなごをお楽しみください!

 

19:55。約2時間の身体とデバイス類の充電後、四国ステージへ。八幡浜のフェリーターミナルでギヨームさんと別れ、先を急ぐ。理由は一つ。 

セグメント9を翌日の日中にクリアしたいからだ。 

苔むした篠山の下りや、今回最長の15kmグラベルを夜間に一人で走りたくない。事前チェックの段階で、グラベル区間が長く28cのタイヤで乗り続けることは厳しいと思っていて、さらに頂上付近の景色は日中に見たかった。 

 

セグメント6「Tochimoto River」は印象に残りにくい。そもそもそのような川の情報を検索してもほぼ出てこない。アップダウンの激しい村をクネクネと抜け、最後に約550mの山岳を登る。狭い道のためスピードも出ず、不気味な林道を走る時間も長い。そんな中、開けた集落の体育館だけが電気に照らされ、大人たちがバスケをしていた。車通りもなく、林道ばかりの区間で、唯一「人間界で生きている」ことを感じられた瞬間だった。 

 

こうして DAY2は298kmを走行。 

愛媛県鬼北町、セグメント6を進む途中でその日の走りを終えた。